それは、ある日の浦原商店での出来事である。
「黒崎さん。これ、どうっスか?アタシの力作ですよんv良く出来てるっしょ~。」
いつもの様に浦原の部屋で寛いでいると、浦原は何かを持ってやってきた。
「・・・は?なんだそれ。」
その手を見ると、持っているのは手のひらサイズの人形だ。しかも俺と浦原に似ている気がする。
「何って勿論、アタシと黒崎さんの人形ですよ~v可愛いでしょ?」
予想通りの答えを返して来たかと思えば、ニコニコと嬉しそうに人形を見せてくる。
確かによく出来てると思うが…俺の人形、なんか眼つき悪くねぇか?
大体、自分達の人形を作るなんて一体何処の時代の乙女だよ・・・。
「いや、だから…なんでそんなもん作ったのかって聞いてるんだよっ!」
聞き返すと、聞いてくれるのを待ってました~とばかりに嬉しそうに人形の説明をし始めた。
「実はこれ、アタシの発明品なんスよv一見ただの人形に見えますが・・なんと! この人形で行った事が後々、本人にも起きるという品物なんです。――まぁ、まだ試作段階なんですけどねん。」
―どうっすか?面白そうでしょぉ~v― と楽しげに話す浦原を横目に、俺は疑わしそうに見ながら言った。
「はぁ~~?ホントかよ。・・・マジで普通の人形にしか見えねえし。しかもまだ、完成してないんだろ?
本当に起きんのか分かんねぇじゃん。」
大体コイツの発明品は胡散臭い・・。この前も変な薬を飲まされた挙句‥うさ耳が生えやがった!
おまけにコイツ、その時・・・
「あれぇ~おかしいッスね~。予定では嘘をつくと‥語尾に『ぴょん』て言うようになるはずだったんですけどねぇ~。
――まぁ、それも可愛らしいので全然OKスけどv」とか何とか、いけしゃあしゃあと抜かしやがって!
お陰であの後、どんな目にあったかと思うとっ・・・。
絶対阻止しなければならねぇ。また変な研究の実験台にされてたまるかよっ!
俺は警戒しつつ‥何か仕出かさないか浦原を睨みつけていると、
「やだなぁ~黒崎さん、そんな怖い顔しちゃって。この間の事、根に持ってます?
今回は大丈夫ッスよv安心してくださいな。」
・・確かに今回は人形だ。特に、変な薬を盛られたりするわけではないし・・
多少不信感は拭いきれないがそこまで警戒する程の事でもないか。
俺がそう思いかけて警戒を緩めたのをいい事に、「では、黒崎さんにも信じて頂けた事ですし―――見てて下さいね。」
と人形を取り出して何かをし始めた。
「そうッスねぇ~例えば・・・こうすると――」
そう言って浦原は手に持っている自分の人形の口に、俺の人形の口を押し当てた。
「なっ!なにしてんだよテメェッ!!」
幾ら人形とはいえ、俺の人形が浦原の人形にキ・キスをするなんて恥ずかしすぎる。
思わず俺は真っ赤になって浦原の胸倉に掴みかかるがっ・・「―ぅわッ!?」
勢いあまって躓いてしまい、浦原を下敷きにする形で転んでしまった。
―イテテテッ― そう言ったつもりが声が出ない。恐る恐る目を開けると――
「・・・・・。」 「・・・・・・ッ!」
目の前には浦原のドアップ! 「ッわあぁぁぁ~~!!!」
慌てて起き上がり、思わず叫びながら後退りしてしまった。
だっだって・・・偶然とはいえ浦原に、キ・キスしちまった。しかも俺から押し倒してッ!
俺が百面相してパニクっていると、「酷いッスね~。そこまで拒否られると流石に傷つくんスけど…。」
起き上がりながら浦原はそう言い、
「いやっ!これは‥その、違う!嫌って訳じゃぁ・・じゃなくて!その‥事故だからっ!
‥えと、キス…しようとした訳じゃ‥。」
真っ赤になりながら必死に言い訳するが、もはや自分でも何を言ってるのか分からなくなっていた。
そんな俺を可笑しそうに見つめながら‥妖しい笑みを浮かべ、気づけば息もかかりそうなほど傍まで接近していて・・
「フフッ・・そんなにアタシとキスしたかったんですか?
お望みとあらば幾らでもして差し上げますのに…。ねぇ?一護さん。」
耳元でそう囁かれ、気づけばキスされていた。
「・・んっ‥はぁ・・っ…ぁ・・」
口元でピチャピチャと舌が絡み合う音が響き、恥ずかしい。
開放されたかと思えばまた直ぐに口を塞がれ…もう、浦原に与えられる快楽で意識が朦朧としていた。
もう駄目だ・・と理性を手放しかけたその時、ふと頭の片隅に先程の話がよぎった。
(アタシの発明品なんスよ―――この人形で行った事が後々、本人にも起きるという品物―――)
さっき浦原は何をした!?俺の人形でアイツの人形に・・・・。 ―プツッ― 俺の中で何かが切れた。
流されかけていた俺は、人形の事で我に返り渾身の力で浦原を突き飛ばした。
はぁはぁっ・・・。乱れた息を整えながら塗れた口元を拭い、
「てっめぇー!なにがキスしたいのかだッ!?お前の人形のせいだろうがっ!!禄でもねーことしやがってっ。」
怒りのままに怒鳴りつけた。
すると浦原は落ちた帽子を拾い上げ、パタパタと埃をはたきながら・・
「あ~ぁ、ばれちゃいましたか。残念スね~。でもこの人形、強制力はあまりないんスよ。
本気で嫌な事は起こらないよう、設定してあるんでv」
浦原は詫びれた様子も無く、―だから黒埼さんがキスしたいのはホントッスよんv―などとサラッと言いのけた。
そんな浦原の言葉に、怒りと羞恥心でブルブル震えていたがこのまま言い返した所でアイツの思う壺だ。
「とにかく!そんなモンは没収だっ!!アンタが持ってると碌でも無いな事に使いそうだからな。
・・あ!また作るとかもぜってー無しだかんなっ!」
これ以上、何かされてたまるかと思い‥人形を没収するのが万全の策だろうと考えた。
「えぇ~そんなぁ・・。折角これで黒崎さんとイチャイチャしようと思ったのにぃ~。」
などと浦原はごね出した物だから「それが駄目だッつってんだよ!この馬鹿がっ。」 ―ゴスッ― 殴って黙らせた。
「―愛が痛いっ――」 などと言いながら、顔を押さえてシクシク嘘泣きしている浦原は、少し考える様子を見せると・・
「まぁ、元々アタシの人形は黒崎さんにあげようと思って作ったんスから‥仕方ないっスね。」と言い出し
――アタシだと思って大切にして下さいね~v―といやにニコニコしだした。
あまりにも素直に従ったので、まだ何かあるんじゃないかと思ったが・・
「毎朝、おはようのキスとかして下さいねんv」
―そしたらアタシ、飛び起きて黒埼さんのとこに行っちゃいますから~v―
と先程から恥ずかしいセリフばかり言っている浦原を黙らせる為にそれ以上考えることは無かった。
家に帰り、鞄を無造作にベットの上に放り投げると‥例の人形が顔を覗かせた。
そういえば没収して来たんだっけ・・。
ふとそんな事を思い、改めて手にとってマジマジ見てみると細かな所まで良く出来ている。
浦原の帽子とか取れるし・・、服も本物と材質と同じなんじゃねぇ?
そんな事を考えながら見ていると、ふと悪戯心が芽生えた。
アイツにもやられたんだし・・ニヤッと笑いながら浦原人形の帽子を俺人形の頭の上に置いてみた。
・・・・・・。シーン―― 何も起きねぇーなぁ。距離が遠いと効果が無いとかか?
ちょっと悪戯してやろうと思ったのに何も起きずガッカリしていると・・・
―ガタガタガタッ―― 大きな物音がして驚いて振り返ると、少し開いていた窓が突風で大きく開き・・
外からフワッと何かが飛んで入ってきた。
あっ。眺めていると入ってきたのは浦原の帽子で、フワフワと宙を漂いながら俺の頭の上にポンと納まった。
「うわ、すッ凄ぇーーッ!!本当にアイツの帽子、来ちまったぜっ。」
驚きと興奮を抑えきれなくドキマギしていた俺は、浦原の帽子を被ってて…
あ‥本当にアイツの帽子だ・・。まだ浦原の体温が残ってる。
そんな事を思い、別の意味でもドキマギしつつ帽子をギュっと握り締めた。
しばらくして落ち着くと、この帽子・・どうしようか?という問題が浮上した。
没収しておいて悪戯したことがバレたら、一体何されるか判ったもんじゃない。
とりあえず後で人形を使って戻しておこうと思い、ベット際の棚に二人の人形を並べて置いて、今日は寝る事にした。
その夜の深夜、皆が寝入った頃に一護はムクッと起き上がり‥辺りをキョロキョロと確認をすると、
そっと浦原人形を手にとり、「・・おやすみ、――喜助。」 ―チュッ―
そう囁いてから人形の頬にキスをし、照れてバタバタしつつ‥大事そうに抱きながら寝入るのであった。
あぁぁぁぁーーー!!!スミマセヌ><;; またもや当初の予定、大きくずれちゃってこんなのになっちゃいました~。
こんな駄文でよければ、ラン丸さん!どうぞ貰ってやって下さい。
ちなみに浦原さんは全部お見通しですv・・あの人形、単体だと本人と思ってやった事が伝わる設定ですからw
でも言うとバレちゃうので、ハンサムエロ店長は言わずに堪能している事でしょう~v