ズルズルズルズル―――
「平子さ~ん?」
目の前で手をヒラヒラさせるが、反応がない。
喜助と平子は今、うどん屋に来ている。
うどんを啜りながら平子を覗き見るが、淡々とうどんを食べ続けているだけであった。
僕‥何かしましたっけ?
特に身に覚えはない。・・・・・今回はの話だが。
いつもと様子の違う平子に不安を覚えつつも、声をかけた。
「うどん‥美味しいッスね。」
「あぁ…」
「どうかしたんですか?」
「あぁ…」
「さっき大雨が降って来ましたよ…。」
「あぁ…」
「実は総隊長がカンカンに怒ってるらしいッスよ。」
「あぁ…」
何を言っても生返事な平子に思わずムッとしてしまう。
―――折角…二人なのに・・・。
ちっとも反応を示さない平子に不機嫌になっていた喜助だが、悪戯っぽい笑みを浮かべると…再び話し掛けだした。
「平子さん、好きッス…」
「あぁ…」
「・・・接吻してもいいッスか?」
「あぁ…」
「本当にしちゃいますよ~。」
「あぁ…」
・・・・・・ピキッ
いい加減、段々と腹が立ったきた。
今のだって…本気だったのに……。
「平子さんのハゲーー…。」
「ハゲとらんわ、ぼけっ。」
「はれぇ…?」
たまらず憎まれ口を叩くと、予想外に返事が返ってきた。
でも…やっと答えてくれたかと思えば、ぼけ‥だもんな…。
そんな事に少し落ち込みつつも改めて平子に問い掛けた。
「…ホントどうしたんですか?平子さん。」
心配でそう尋ねて見るが、
「いや…なんでもあらへん。ちょいと、考え事しとったんやけど‥もう……解決したわ。」
そう言ってニカッと笑顔を見せたかと思えば、ほなそろそろ出るかと席を立つ。
「えっ!?…待ってくださいよ~。」
慌てて追って席を立ち、喜助も後に続いた。
店を出たかと思えばまたもや黙りこんで歩く平子に、本当にどうしたのだろうと…後を追っていたその時・・・
「え?…ぅわっ!?……ん…ッ」
突然、平子に裏路地に引き込まれたかと思うと…目の前には平子の顔が一面に広がっている。
「ぅん…ッ……はっ…」
口の中で舌を絡め取られ、ようやく接吻されている事に気付いた。
なっ…なんで…。
あり得ない事態に混乱し、ようやく唇が解放されると‥やっとの思いでその言葉だけを、なんとか口にした。
「接吻したってもええんやろ?」見上げると、そこにはニヤリと笑みを見せる平子がいる。
そんな表情にドキッとしつつも、耳から入ってきた言葉に思わず目を見開いた。
「聞こえてたんスかっ!?//」
あまりの驚き様に、真っ赤になりながら口をパクパクさせている喜助に…
「おぅ、雨降っとるんのも‥爺さんカンカンやっちゅうのも、・・・喜助が俺ん事好きゆぅたのも全~部聞いとったで。」
と平子はサラッと言いのけた。
「…あっ、あれは‥ですね…// その……」
なんとか誤魔化そうとする喜助だったが、「えぇねん!」と平子の発した声に遮られたのだった。
「えぇんや…嘘かてホンマかてどないでも・・・」
そんな平子の言葉にショックを受ける喜助だったが…
「俺が喜助に惚れてもうたんには変わらんのやからな。」
「――――えっ?」
続けて聞こえてきた言葉に自分の耳を疑った。
そんな喜助を眺めながら、
「お前が気ぃ~つかせたんやから、責任取って貰うでぇ。…こんから覚悟しとけや。」
自信タップリの笑みでニヤリと言い放ったのであった。
そんな平子に喜助は、
「そんな…僕だって平子さんの事・・・///」
好きって言ったのは嘘じゃ無いッスよ…。
照れながらもたどたどしく伝える喜助に、今度は平子が目を見開く番であった。
「…喜助、ほんまに―――」
嘘やないんかぃ…?
そう言い掛けて手を伸ばそうとしたその時・・・
「ぅわっ…!?」
「ぅあっちゃ~~!なんやこれっ!?」
突然熱風が二人の方に降り注いだ。
明らかに自然の物ではない。
辺りを確認すると、文字通り烈火の如く炎を纏った霊圧が近付いて来ていた。
それに気付くと喜助は思い出した様に、
「あっ!…そういえば、総隊長がおかんむりって言うのは本当でした~。」
あっけらかんといい、…こないだ総隊長の大切にしてた花瓶、平子さん割っちゃったでしょう?
と言いのけた。
「アホッ!なんでそない先に言わんのや!?」
慌てて言うと、「逃げんで、喜助!」と手を差し伸べた。
「――っ//…はいっ!」
その手をなんの躊躇いもなく取ると、嬉しそうに二人で駆け出したのであった。
初過去篇の二人‥。結局はギャグになるような?(汗)