―-  に呑まれて  -―
























少し肌寒い夏の夜。
細長い指からトクトクと酒を注ぐ音が聞こえる。


「そういえば。」


お酌をしているその男は思い出したように微笑んだ。
そして真直ぐに切られた金の髪を持つ男を見つめて、酌をする手を止める。


「平子サンとお酒を飲むのって初めてじゃないっスか?」

「…ああ、せやな。」

「何度言っても飲みに連れてってくれなかったですし。」

「タイミングの問題やろ。」


平子と呼ばれた男はそう言うと、男から徳利を受け取って男のお猪口に酒を注いだ。
そして注ぎ終わると、静かな乾杯が行われる。


「…………。」


しかし平子はお猪口に唇を付けただけで、静かにそれを卓袱台に戻した。


「あれ?減ってないっスよ。」

「…高校生に酒、飲ますなや。」

「高校生なんて見た目だけでしょ。いくつ気取ってるんスか。」


くッ、と一気に男はお猪口の中身を飲み干すと『飲んで下さいよ。』と視線を送る。
その視線に平子は『しゃーから、オマエと飲みたくなかったんや。』と溜息をついて酒に口付けた。


「お酒…嫌いなんスか?」

「いや、強くないねん。」

「え…」

「意外やろ?」


そう言って、お猪口から口を離した時点で既に平子の顔はほんのり赤く染まっていた。
それでもいつもより緩む口元はいつも通りニヤリと歪んでいる。


「せやから、嗜む程度にしとくわ。」

「別に泊まっていけばいいのに。」

「そういう問題ちゃうねん。」

「…………。」


薄く目蓋を閉じて二人は酒を楽しんだ。
少し温い風が通り、サラサラと指どおりの良さそうな金の髪は風に靡く。


「今日は暑いなァ…。」

「そうっスね。」

「……ッと…。」


フラっと、重力に抗えない頭を起こして、平子は足取り悪く開け放してある障子に近寄った。
そして男の近くに行くと壁に寄りかかり、赤く染まった頬を金の髪が隠す。


「平子サンの家に、行ったことないんスよね。」

「…今のか?」

「どっちも。」


男はそう言うと、また少しだけお猪口を傾けて自身の口内に苦い酒を流し込む。
平子は外の景色を見ているようで、二人の間には静かな間が生まれた。


「…いつも、遠いんスよね。」

「何が。」

「別に、今更な話っスよ。」


諦めたような声が室内に響く。


「アタシの家にも、来たことなかったでしょ。」

「来とるやんけ。」

「…『ボク』の家、の方が判り易いっスかね?」


男は持っていたお猪口をそっと卓袱台の上に戻すと、外を見ている平子の方に視線を送った。
しかし平子の意識は未だに外の方へと向いているようで、男の方には振り向かなかった。
男は平子のその様子に小さく息を吐くと、再び酒に視線を移す。すると、


「今、来とるやろ?」


その声に反応した時には既に、赤く染まった顔が近くにあって。
目を見開いた時には頭の上にその手が乗せられていた。


「我慢しとったん。」


平子はそう言ってニヤっといつもより緩んだ笑みを向けると、途端に力が抜けて男の上に倒れた。
男が驚いて平子の顔を上げると、既に寝息がそこからは漏れている。

浦原は、きっと起きた時には覚えていないであろうその言葉を噛み締めて、平子を抱きしめた。




































Dear.Saku

Thanks!! 10000HIT...mistake...sorry...
Plan:『喜助さんを泣かせる平子さん(平浦)』

By.Ba 【Baby-tooth


Ba様から10000HITリクエストで頂きました~v 第2弾v
こちらも素敵過ぎるっ><vv グフフ//
ありがとうございましたっv