花火5


「―――なぁ、なんで・・あんな事したんだ。」
ずっと聞きたかった一言は、案外スルリと口の中から出てきた。
しばらく沈黙が続いたが、浦原は俺の顔を覗き込むように近付き・・また「・・スイマセン。」と謝ってきた。

そして屈み込んで俺に優しくキスをした。

始めは軽く触れる程度のキス・・次第に口付けは濃厚になっていき、離れたときには互いの体液が絡み合って口から溢れていた。
そして浦原は俺の右手を取り、まるで懇願するように額に当てて・・
「――アタシだけを見ていて下さい・・・。」
そう言って俺の手に、まるで誓いの口付けのようにキスを落とすと…俺の目をジッと見つめていた。
視線が絡み合う・・。

いつに無く真剣な浦原は先程と同じ様に辛そうな表情をしていたが、その目には確かに欲望の色が光っていた。
「――え?」

つまり、どういう事だ・・。浦原だけを見ろ?

――まさかとは思うが・・・
問い詰めるようにジッと睨みつけると、今度は困った様なそれでいて少し照れくさそうな顔で頬をポリポリと掻きつつ話し出した。

 

「えーとですね・・その・・・、自分で誘っておいて申し訳ないんですが・・一護さん、あまりにも花火に夢中で・・。 
 近頃会うこともままならなかったですし、喜んでもらおうとやった事なんですが、
 ―――アタシでは無くて花火に嬉しそうな笑顔を向けてる一護さんを見て、つい・・・。 
 情けない事ですが・・花火に嫉妬してしまいまして、意地悪をしてしまいました。・・・申し訳ないっス。」


――まぁ、一護さんの可愛い悪戯に煽られたってのもあるんスが― 
などと言い辛そうに話して・・・

 ――いい大人の癖して何やってるんだかアタシは・・。自分で作った物に嫉妬する何て、馬鹿じゃないか・・。

 など、ブツブツ独り言を言っていた。

―――はぁっ!?・・・それってつまり・・・だよな? だからアイツ、花火が観たいんでしょうとか、言ってたのか?
いつも飄々としてどんな時でも余裕な浦原が・・?アイツも俺と同じ様に思ったりしていたなんて・・・ッ。
でも・・・・「――――――ッ!!」
あまりにも色々な感情が一気に押し寄せて、体がブルブルと震える。
「・・・一護さん?」
俺の様子に不安そうに顔を覗き込んできた浦原に、俺は・・・-ガシッ-
「――こッ―――この大馬鹿野郎がッ!!!!」
胸倉を掴んで大声で怒鳴りつけてやった。
「馬鹿じゃねぇのかっ!!俺はただ、お前と一緒に過ごしたかっただけなのにッ!
 ・・花火が幾ら綺麗でも、どんな楽しい場所に行ってもお前と一緒じゃなきゃ意味ねぇーんだよっ!ちっとも楽しくなんかねーんだよッ!!
 ―― 一緒に居られて嬉しいと思ってたのは俺だけか!?・・そんなに俺の事を信用出来ないのかよッ!!?」

――はぁっ・・・はぁ・・・っ・・―――

俺はそんなに信用されてないかと思うと、悲しかった。
激情に身を任せて怒鳴りつけて突き飛ばし、息切れしていると・・
それまで怒鳴りだした俺にポカーンと目を丸くして驚いていた浦原が、いつの間にか傍まで寄ってきていて

そっと俺の頬を撫でるように触れた。


「ごめんなさい・・。信用してないわけじゃないんです。
 ただ、アタシが一護さんの事が好き過ぎて・・
 ――いっそ閉じ込めて誰の目にも触れさせない、アタシだけの一護さんにしてしまいたい。

 ・・なんて考えてしまう、手に負えない強欲な男なんですよ。」


―まぁ、そんな事しませんけどね。―
冗談交じりにそう言うと、興奮しすぎて目に溜まっていた涙に優しくキスを落としていく。
その優しい仕草に、少しずつ落ち着いてくると・・・


「でも嬉いっスねぇ~。一護さんがそこまでアタシの事を想っていてくれてたなんてv」
すっかりいつもの調子に戻った浦原がヘラヘラと笑いながら、そんな事を言ってくる。
それを聞いて一護は、自分が凄く恥ずかしいセリフを口にしていた事に今更ながら気づき、

真っ赤になって言い訳しようとするが・・口をパクパクさせるだけで声が出てこない。


そんな一護を満足げに眺めていた浦原は、一護が今だ動揺しているのをいい事に再度押し倒して濃厚な口付けをし

、余韻で惚けてる一護の耳元に口をあてて・・・

「では誤解も解けたことですし、改めて―――花火とアタシ・・両方タップリと堪能させてあげますよ・・。」

と囁いた。
そしてまた右手を取ると、今度は舌で見せ付けるかの様に舐めつけて・・・
妖しい笑みで見下ろしている浦原がいたのであった。



 

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