鈴の音に誘われて(番外)4.5

 

 

君という光に出会ってから世界が鮮やかに変化した。

 生きていることが楽しくて、毎日が待ち遠しかった。

だから忘れていた。…いや気付かない振りをしていたのかも知れない。

・・・・自分は化け物だと。

 

   所詮、君とアタシはどれだけ望んでも相容れない存在であることを・・・。

 

 

 

 

「・・・はぁ~~っ。」

これで何度目の溜め息か分からない‥。

今日は、あの子が来れない日だ。

あらかじめ知らせてくれる律儀さがあの子らしいというか、そう思うと自然と口元が緩む。

けれど・・・あの子が居ない。それだけでまるで別の世界に潜り込んでしまったかのように空気が違う。

ここは本当に昨日までと同じアタシの店なのだろうか?

すっかり毎日訪ねて来てくれるあの子に、思いのほか依存してしまっていた自分を思い知らされる。

 

 

「まさか‥ここまで侵食されてしまってるとはねぇ~。」

――アタシともあろう者が・・・。

思わずそう、溜め息をつきながら呟いてしまうほど何かが足りない。いや‥何かではなくあの子、黒崎さんが・・。

 

 

 

初めて会ったときは面白い子だなぁ~と思って少し興味が沸いただけだった。

凄い勢いで本屋に駆け込んできたかと思えば見るからにガックリ肩を落として‥でも、アタシの持ってる本を見た途端眼を輝かせた。

明らかにそわそわしだしたその子がなんだか可愛らしくて、欲しいのかなぁ?と思ったけどわざと声を掛けなかった。

そしたら、緊張した様子で顔を真っ赤にして話しかけてきたんで、礼儀正しい子なんだなと思った。

欲しい理由をパニクって必死に話すその子が可笑しくて、つい‥笑ってしまった。

一体、何年ぶりだろう。声を上げて笑ったのは‥。

アタシが本をあげるというと、何故か怒り出すし‥まったくこんな変わった子には会ったことがない。

なぜか「またの機会に‥」と気付いたら告げていたが、本当に会えるとは思っていなかった。

 

 

けれど直ぐに再会の時は訪れた。

その日は何気無く、夜道を歩いていた時だった。

あの子がアタシの前に現れたのは・・・。

気配に気付かなかったことにも驚いたが、アタシを見詰めてくる眼‥その眼に魅入られてしばらく視線が外せなかった。

まぁ、あの子はアタシだと知るはずが無い。・・・だってその時、アタシは猫の姿だったのだから。

 

 

翌日、気になって会った場所に行ってみると何故かあの子がいて驚いた。

話しかけたらアタシの事を覚えてくれていて、嬉しく思った。

このまま別れるのが名残惜しくて、気付けば適当に理由を付けて店まで案内をしている自分がいた。

店に行くと、初めは警戒していたみたいだが直ぐに打ち解けちゃって‥この子大丈夫なんですかね?と心配になったくらいだ。

けれど話している内に、実は口が悪くて‥でも心優しい子で、感情豊かな子だなぁと思った。

美味しそうにお菓子を食べるその子を見ていると、アタシまで嬉しくなってしまい‥そんな自分が信じられなかった。

アタシが他人を見てそんな事を思うなんて・・・。

可愛いと言ったら真っ赤になって怒るもんだから、余計に構いたくなってしまう。

けれど、変な事で遠慮して‥無理に大人びている姿が痛々しく感じ、自然と優しく声を掛けている自分がいた。

偽りではなく、心からの言葉を・・。

 

 

それからは毎日が待ち遠しかった。

いつも来てくれるあの子。ただ話をして、テッサイのお茶菓子を食べていくだけなのに毎日が充実していた。

くっつくと意外と照れ屋で恥ずかしがって、引き剥がそうとする。

けれど‥それが本気じゃないのがまた可愛らしいと思ってしまう。

そんな態度が、少しは心を開いてくれたのかな?と思ってしまい、つい嬉しくてからかってしまう。

仕事の事を聞かれたときは少し‥ドキッとした。

まさか君の好きな小説を書いている人物ですよんv…なんて言ったらガッカリしてしまうかも知れない。

・・・それ以前に信じてもらえない確率の方が高そうだが。

原稿の山を見て本気で気遣ってくれたり、君はいつも人の事を本気で考えてくれる‥そんな子なんですよね。

アタシには無い部分。・・・だから魅かれているのか?

今はまだ解けない難題。

 

 

 

 

けれど、これだけは確かだ。

アタシは君を失いたくない。・・・だから、これ以上アタシの中に踏み込まないで‥。

でないと、アタシは君を・・・・。

 

 

 

 

 

なんか独白っぽくなってしまった。汗 

 

                                                                                    5へ