「あ~、なんか暇やなぁ~。折角来てやっとんやらかなんか相手しぃー。」
この平子の一言から始まった。
喜助の怪しい笑みの後・・・
「分かりました。でしたらアタシの実験に付き合って下さいなv・・・平子さんには特別にと~~っても、面白い体験をさせてあげますよんv…ねぇ・・・。」
己の発言に後悔したのは言うまでもない。
・・・・そして10分後。
「うわっ!?何やこれっ!俺‥喜助になってるやんかっ。」
その後、変な装置に入れられたかと思うと、気付けば平子の体は浦原になっていた。
しかも目の前には・・・
「そうですよんv‥これは開発中の装置でして、魂魄はそのままに意識だけを相手と入れ替えられる装置なんです。今平子さんの意識はアタシの魂魄に入ってる‥。――文字通りアタシと一つになったという訳ですよ‥。如何っスか?アタシの中は・・。」
――――気持ちいい?
そう眼で問われてる気がして、話しているのは喜助だが‥顔は自分である筈なのに思わず背筋がゾクッとした…。
クスクスと妖しく笑う自分の顔を目の前にし、微妙な気分になりながら
「アホかッ!お前が言うと洒落にならへんねん。・・・で、これでどないする気なんや?」
思わず溜め息をつきながらそう言うと…
「あれ?面白くないっスか?・・アタシ、平子さんの為に頑張ったのにぃー!」
まるで駄々っ子のようにブーブーと文句を言いながら、「まぁいいっス・・・本番はこれからですしね。」
とウキウキ恐ろしい事を呟きだした。
そして俺の頬に手を滑らせたかと思うと‥
「フフッv何かって?‥分かってるくせに。・・・もっと楽しませて差し上げますよん‥。たっぷりと‥ね。」
そうウットリと俺を見ながら囁いた。
・・・・そして、さらに10分後。
俺はなぜか浦原商店で店番をさせられていた。
喜助いわく、「せっかく入れ替わったんですし、アタシは平子さんの体で皆さんに会いに行ってきますねv…平子さんは店番お願いします。・・・くれぐれも…アタシじゃないってばれない様に‥ね。」
――お願いしますよ~。と置き台詞を残して出掛けて行ったのである・・・。
なんやねん、これ・・。
店番と言っても客が来る気配など毛頭無い。
部屋でゴロゴロ転がってるだけで、余計暇になっただけやんか!
どこが面白い事なんだか…。
そんなこんなでやることもないが、頼まれた以上‥店を空ける訳にもいかずにいると1人の来客が現れた。
「ちわ~っ!勝手に邪魔するぜ。‥浦原さんいるか?」
「なんだオレンジ頭~また来たのかよっ! 懲りねえなぁ…。・・・店長なら奥にいるぜ!勝手にしろっ!」
「チッ、言われなくてもそうさせて貰うぜ。」
店先から微かに声が聞こえてくる。どうやら、一護とジン太が話しとるみたいやけど…。
どうやら一護は喜助に用が合って来たみたいや。
・・・ってぇ!!喜助は今俺やんけ! バラすないわれとるし…どないしろっちゅうんや。
そう悩んでいる平子の心知らずで、一護が部屋へと入ってきた。
「よぉ、邪魔してるぜ。浦原さん‥。」
―――こうならもうヤケや!どうせ喜助も人の体使こうて好き勝手やっとるに決まっとんや、俺もちょいと遊んだるわ。
「…お・おぅ!一護かいな。今日はどないな用…じゃなくて・・どんな用件ッスか?‥や。」
すると、一護が驚いたように此方を凝視してくる。
なんや、なんか知らんけど‥一護の視線が痛いような・・。まさかもうバレたんか!?
「・・・・・・・なぁ、あのさ‥。」
「な・なん‥ですかぃ?」
俺は内心、冷や汗ダラダラでそれだけを答える。
「・・・今日の浦原さん、なんか変じゃねぇか?その、落ち着きがないというか‥言葉遣いもなんか変だし。」
ギクッ!
「…それに俺のこと、名前で呼んだよな?」
ギクギクッ!!
あかん、もう完璧にアウトや・・・。スマン喜助ッ!!
一護の視線に耐え切れず、そう心の中で叫んで覚悟を決めたその時・・
「アンタ、まさかこないだの事‥誤魔化そうとしてるんじゃねぇ~だろうな!!」
「・・・へっ!?」
「無かったことにする気なのか!?‥俺がどんな気持ちで告げたと思ってんだっ!!」
「・・・こないだん事?」
一瞬何の事を言ってるのか分からずに、思わずポカーンとしてしまい聞き返してしまった。
とりあえず、バレてはなかったらしい。
だがホッとする間もなく一護が詰め寄ってくる。
「だからっ!3日前に俺が来たときのことだよ!どうなんだ!?今日こそ答えて貰うからなっ!」
なにやらよう分からへんが、喜助に何かを聞きたいみたいやな・・。
まためんどい事に巻き込んでくれたやないか…。
ここは・・・
「あぁ!こないだの事やな!・・・覚えてるに決まってるや・・ないですか。」
思わず歯切れ悪く、そう答えると一護はホッとした様子でいる。
こいつ・・・こんな顔もしへるんやな。
何気無く、そんな事をしみじみ思っとると‥
「じゃあ、返事はどうなんだっ?…俺だって覚悟はできてる、ハッキリ言ってくれ!」
そんな一護の真剣な様子に、下手な事は言えんと感じ
「あぁ~~っと、その・・・えっとなぁ・・・・。」
思わず言葉を濁らせてしまった。
「・・・やっぱ俺じゃ駄目なのか?俺が餓鬼だからかっ!?そんなのっ・・・」
またもや切羽詰った様子で詰め寄ってくる。
・・・ありゃ?って~か…これってもしかして・・。
「おぃおぃ…一護、ちょい落ち着けや。別に(喜助は)お前が餓鬼やらか嫌いだなんて抜かして無いやろ。」
あまりの様子に、一瞬自分が喜助の体でいる事を忘れて‥そう声を掛けてしまった。
しかし、それが間違いだった。
「・・・本当か!?・・・それじゃあ、さっきの!‥もしかして名前を呼んでくれたのはOKだって事だったのか?」
すると急に一護の態度は一変して、先程の思いつめた様子が嘘のように明るくなり…
「はっ?・・・いや別に、そういう訳じゃあ・・・。」
さすがに慌てて弁解するが、そんな平子(体・喜助)の言葉はもはや‥浮かれきった一護の耳には届かないようだ。
「そうだよな。何度言っても呼んでくれなかったもんな・・・そうなら浦原さん、言ってくれればいいのにっ!‥あ、また俺をからかってたんだろ!」
「・・いや・・・だからな、一護・・。そうじゃなくて・・・」
内心慌てる平子(体・喜助)をよそに一護はどんどんとエスカレートしていく。
「浦原さん、俺‥本気だから。マジでアンタのことが好きなんだっ!!…だから、いいよな?」
そういいながらジリジリと迫ってくる。
な、なんやこの‥めんどいどころの展開じゃなくなってしもうたで‥。
いいって何がやっ!?いいわけ無いやろ!!
しかし‥暴走した一護を止める術はなく、この状況に混乱している平子(体・喜助)をよそに
一護はいつの間にか直ぐそこまで接近しており‥肩をガッシリ捕まれて唇が重なり合いそうなくらいに顔が近付いてくる。
――ギャァアァァァ~~~~っ!!!―――
平子が悲痛な心の叫びをあげている、その頃・・・当の本人はと言うと