花火3

――気を取り直して花火を見ることにした。
とりあえず、どの辺りに座って見るかぁ~?と思っていると、浦原さんは俺の横に座ってニッコリと笑い、膝をポンポンと叩いた。
・・・はぁっ!?――まさか・・そこに座れとか言うんじゃないだろうな・・!・・いやっ!そうだと信じたいっ!!
恐るおそる聞いてみることにすると・・・
「・・・・おい・・何の真似だ。まさかとは思うが、そこに座れとかっ…ぬかさねぇーだろうなぁ!」
浦原さんは相変わらずヘラヘラと笑みを浮かべていて、「そうっスよ。」とあっさりと言った。
「一護さん専用の特等席っスよ~v 座り心地はバツグン!アタシが保障しますよんv」
・・・いや、お前が一番信用ならねぇ。と突っ込みそうになったが、その前にひょいっと軽く持ち上げられて膝の上に乗せられてしまっていた。

「なっ!!お・おいっ、離せっ!!誰かにこんなとこ見られたらどうすんだよっ!////
軽く叫びながら、ジタバタ暴れていたら
「大丈夫ですよ。・・・・言ったでしょ?一護さん限定の花火大会だって。ここにはアタシと一護さんの二人しかいませんから・・。」
そう、耳元で囁かれて・・・

「それに・・たまには二人っきりで過ごしたいじゃないッスか。」

――こう言われてしまうと、何も言えなくなってしまう。
・・・俺が家族やダチを大切にしているのを分かってくれているから、いつもそっちを優先してしまって最近では二人でなんて過ごす時間があまり取れなかったからだ。
でも…悪いと思いつつも、正直・・・嬉しくなってしまった。

 だ・だって、これって!なんか・・・甘えられてるみたいじゃねぇーっ!?////
いつも飄々と涼しい顔ばっかしていて、たまに不安になる。・・・会いたいのは俺だけなんじゃないかと。
それが、アイツも俺と一緒に過ごしたいと思っていてくれたと知るだけで・・・こんなにも嬉しくなっちまうなんてっ!!

我ながら単純だなとは思う・・・。
それに、会いたいと思ってたのは俺も同じなので、


「・・っ!!――しょうがねぇから、たまにはアンタに付き合ってやるよ。・・しょうがなくだぞっ!!そこんとこ勘違いするんじゃねぇーぞっ!///
・・・だからと言って、素直になるのは難しく…憎まれ口を叩きながら言うと、浦原はそれでも嬉しそうに笑いながら

「はいv ありがとうございます。」

とニコニコしていて、それから二人で花火を観だした。

 

――ドォン―――バン―――――パァン―――

二人で待っていると、花火が始まりだした。
色とりどりの花火が次々とあがっていき、予想外に大規模な花火大会にビックリしてしまった。
すげぇ~~~っ!!
思わず空を見上げながら見入っていると、後ろから手が伸びてきてギュッと抱きしめられた。
「・・どうですか?気に入っていただけましたかね?」
後ろから楽しげに聞かれて、今日くらいは素直になろうと思ったが・・・きっと後ろではいつもの笑みを浮かべてるに違いない。
たまにはその余裕の笑みを崩してやろうかと、花火でテンションが上がっているせいか悪戯心が芽生えた。
俺はニヤリと、好戦的な笑みを浮かべて振り返り・・・チュッ

アイツの唇に軽くキスをして「あぁ、悪くない・・。」と答えた。
してやったりとした顔でアイツを見てみると、ポカーンとした間抜け面をしていると思いきや・・急に赤くなった。
・・あ・赤くなってるっ!?アイツがっ!!嘘だろっ!?初めて見たぜ・・・!
仕掛けたのはこちらの癖にして動揺しまくっていた為、その後・・浦原がどんな表情をしていたかに気づくことはなかった・・・。


「一護さんにそんなに喜んで頂けると、アタシも嬉しいッスね~v 苦労して準備した甲斐がありましたよ。」
先ほどの表情は何処へやら、直ぐいつもの調子に戻ってしまった。
「くっ!今日だけだかんな!!/// アンタじゃなくて花火観たいだけなんだぞ!」
悪戯に成功したかと思えば、サッと元に戻ってしまってむしろ逆効果だ・・・。

アイツを喜ばせようとした訳じゃね~のによぉ~!



――
パン――パンパンパンッ――パァン―――――

その間にもまた花火はあがっている。
・・・・ん?今度は違う花火みたいだな。
「お、おい!あれジン太じゃねーかっ!?あっあれはウルル?あっちはテッサイさんかよ!!」
色とりどりの花火の中・・・今度は色んな人物の顔の花火が空へと描かれていた。
「そうっスよん浦原商店特製!空座町花火ッス!・・・ほら!あそこに一護さんも居ますよ~v」
浦原さんはそう言って、扇子で空を指した。
その方向を見上げて見ると・・・仏頂面した俺の顔の花火があがっている・・。
他にも柚子や花梨・・・クラスの連中までもがいた。
・・・凄ぇ~けど、勝手に作っていいのか、あれ?まぁ、そんな道理が通じる奴じゃないけどな。


そして改めて次々とあがる、色んな花火を夢中になって眺めていた。
しばらくは二人して、無言で花火を眺めていたが・・・
「・・ひゃっ!!――ちょ、ちょっと・・なにしてっ・・・//// んっ!」
先程まで、大人しく花火を眺めていた筈の浦原は…、いつの間にか胸元にスルッと手を忍ばせて弄りだしていた。

軽く触られているだけなのに、巧みな手の動きに翻弄されてしまう。

「ちょっ・・や・やめ・・・っ!」

慌てて止めようとし振り向こうとしたが、顎を掴まれ前を向かされてしまう。

そして耳朶を甘噛みされながら、

「・・駄目ッスよ、一護さん。ちゃんと花火観てないと――。」

 そう囁きながら、耳の輪郭を確かめるように舐められた。

 

  

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